補綴構造設計士・歯科技工士川島 哲の世界
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「非常に臨床に則した教科書である」

〔医歯薬出版KK 歯界展望 Vol.107 No.3 2006-3〕より
本多正明先生の紹介文(書評)

近年、補綴臨床において講演会や誌上に数多く出ているトピックスとしては、ラミネートベニアをはじめとするオールセラミックレストレーション等の審美補綴や インプラント補綴が中心になっている。歯周補綴や一般的なクラウンブリッジについては決して多いと言えず、ましてや、デンチャーに関するものはそれよりも少ないのが現状である。 また、デンチャーがテーマの一つとしてとりあげられていても、総合的な見地に立ったものは少なく、テクニック的なものが多いようである。私見ではあるが、総合診断に基づいたうえで、 デンチャーを使った臨床ケースをもっと見てみたいと思う。

日本における日常臨床では、まだまだ多数歯欠損のケースがたくさんある。欠損補綴の大きな目的は、欠損スペースを補綴物によって復元し、機能の回復と審美性の改善を図ることである。
それともう一つ、忘れてならないのが残存歯をはじめ、残存組織の維持・安定を図ることである。しかしながら、日常われわれのところに訪れる患者の口腔内を診ると、特にパーシャルデンチャーが装着されているケースでは、 残存歯そのものの状態も良好ではなく、デンチャーによっての二次固定の効果もほとんどない。
逆に残存歯に対し、力学的に大きな付加がかかってしまっているものがたくさんある。
患者の口腔内の状態は、それぞれ各歯科医の開業地により大きく異なってくると思われる。都心と地方都市の郊外とでは、修復・補綴治療で使用されるオプションの種類の多さは比べようもない。 特に郊外の診療所においては、デンチャーの使用頻度とバリエーションが多いように思う。

これから老人が多くなってくる時代を迎え、われわれ歯科医や歯科技工士がデンチャーに背を向けていては、無歯顎の老人がどんどん増えて来ることを懸念せざるをえない。 われわれの年代はもちろん、若い世代の人たちもいま一度、デンチャーに目を向けてほしいと思う。筆者は、決してインプラント治療を否定しているのではなく、 デンチャーに対する知識を身につければ、欠損歯列への診断力や予後に対する予知能力も培われると思っている。

今回、川島哲氏の著書『T.K.M.キャストデンチャーのすべて』を読ませていただいて、非常に臨床に則した教科書であると感じた。
デンチャーの基礎から臨床、そして材料学のところまでしっかりと書かれており、ところどころに臨床のヒントも載っている。また、この本から川島氏の世界が十分感じられる。 筆者自身も現在、デンチャーのケースは川島氏の弟子にあたる奥森健史氏と一緒に仕事をしているが、この本に出てくる内容とさほど変わらない仕事をしてくれているし、 ほとんどのケースは予後も良好である。
もし、このようなデンチャーが川島氏しか作れないのであれば、歯科界全体から考えて、ほんの少しの力にしかならないし、 デンチャーを使用できる患者の数はごくわずかである。このような本に出会うことによって、少しでも多くの歯科医や歯科技工士がデンチャーにも目を向け、研鑚を積んでくれることを望み、 日常臨床に役立ててほしいものである。デンチャーを勉強することは決して時代遅れではない。咬合再構成の最たるものが総義歯である。 『Top Down Treatment』という考えはすでに総義歯においては昔から存在していた。人工歯の排列位置を元の天然歯の位置を基準にしたデンチャースペースから決定していたのである。 このことはインプラント治療においてフィクスチャー埋入位置の決定と相通じるところである。

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