「姉歯の『構造設計』偽装はなぜ生じたか!!」

1988年、歯科界で初めて「構造設計」を標榜したのは私である。それから17年後の今日、マンションなどの建造物の思わぬ「耐震強度偽装事件」発覚で、 構造設計は国民の注目を嫌でも浴びることとなった。
当時、私はパーシャルデンチャーの「設計」を二つに分類した。

  1. 診断や治療などに基づいて歯科医師が行う「製作の基礎となる設計」を「基本設計」
  2. 使用材料の性質などに基づいて歯科技工土が行う「数値化された設計」を「構造設計」
と分けて考えた。 それまでの欠掴補綴は、ほとんどがまったく数値化されず、とりわけ私の専門とするキャストパーシャルも構造計算から程遠い状況であった。 しかし、この間の私の主宰する実技セミナーで300人以上の「補綴構造設計士」を歯科界に誕生させて品質向上を目指してきた。

姉の次がなぜに「歯」が付くかの気になる点は別として、姉歯秀次・元1級建築士による耐震強度偽装事件を分析する。
報道を見る限りではイーホームズ(民間の指定確認検査機構)、ヒューザー(開発会社)、 総合研究所(コンサルタント会社)のどこに責任があるかの魔女狩り的究明に終始しているが、そんなに複雑に考えることはないと思う。
原因は建築にかかわる人々の「信頼関係」の欠和、そして「自己本位」「私利私欲」に帰結している。日本人は本来、江戸時代を含めて、これらのことを誠実に具備していたはずである。 「経済設計」なる、まやかし的表現は、天災たる自然界の地震に人間の悪知恵が勝てるわけもない。地震に勝利する「自信」は、 まだ人間達には具備されていないのだから、コスト主義はかなり危険因子である。

姉歯氏自身の非人間的、人間性の欠落や、その周辺の施工主らの思考回路の構造的失陥でことさらに増幅し、100棟近くの不良マンションやホテルの誕生となった。  現実は、そこで居住し転居を余儀なくしている家族達のことを思うとつらい。私はなぜかこの家族と歯科の患者達がダブって見えて「構造設計」への思いを今さらに熱くしている。