「機械と手作り」 川島 哲

初めての都市ブレーメン行きと気候の良さが相まって、久々のドイツ訪問は気分もハイとあいなった。 北ドイツの感想は童話の国のようなメルヘンチックな建物が少なく、ごみごみしており南ドイツのような豊かな歴史的な風情は少ない。 逆に日本の都市とさほど変わらず、違和感が少ない。
ハンブルクを始め北ドイツは戦前から工業地帯であり、第二次世界大戦で連合軍の爆撃で多くが破壊されたために、あのおとぎの国のような建物の多くを失った。 いずれにしても戦争は多くの歴史的な建造物を破壊してしまい、ブレーメンは日本で思いめぐらしたメルヘンチックなイメージとは程遠かった。

さて、本筋のBEGO社でのバイオキャストデンチャー(Au−Pt)の技術交流は、私からのヒートトリートメントの技法提供の方が多く、BEGO社側から吸収出来ることは少なかった。 収穫は日本のバイオキャストデンチャーの製作技法が優秀であることが確認できたことである。自らのポジションを知ることで自信を深めた。 ただし相変わらず器材のドイツ優位に変わりはなく、今後40年でもその距離は埋まらないと思う。
BEGO社の計らいでメルセデスベンツの工場見学ができた。CクラスとスポーツカーのSLの工場で、Cクラスの生産は4千カ所のスポット溶接をすべてロボットが行っていた。 そのロボット君は昼夜を問わず24時間働きづめで14年間で機械人生を終焉するそうだ。機械化されて生産されるCクラスと違い、全くロボットを用いず、 レンガ造りの趣のある工場ですべて人の手作りによるSLは対照的であった。テストコースを走行するCクラスは生産台数のわずかしかないが、SLは生産台数のすべてを走行テストする。 Cクラスは400万円からあるが、SLは1700万〜3800万円もする。機械化と手作りの違いはこんなにも価格差がある。

歯科の補綴は手作りとなればSLのバリューを示唆する意味は大きい。SL1台分でカローラを31台買える事実を考えると声を失う……。