デンタルラブパートU(高価であると大切にする?)    川島 哲

27年前のGold(18K)のメガネが、いまだに現役で貴重な自分史を身につけている感覚で大切にしている。しかしながら、Ti合金のメガネフレームは2年程でおしゃかになっている。長持ちの原因は、Goldのメガネは高価ゆえに自然と大切にしたことと、弾力があるので曲がりにくく変形しにくいことによる。Ti合金のメガネはポピュラーだが寿命は短い。
 著名な先人歯科医師が、入れ歯をセットすると、患者さんに次の言葉でしめくくる。
「今日は新調のカシミヤのセーターを着たと思って下さい、乱暴に扱うとすぐに”毛玉”ができます。ですから、やさしく接してあげてください」と。やはり、メガネも入れ歯も高価でなければ患者さんは大切に扱わない。チープな入れ歯は結局のところ大切にしないのだ。メルセデスベンツはコストをかけたから壊れにくいのではなく、高価だから長持ちするのであって、もしも安価であったら直ぐに壊れるはずだ。物に対する扱いはたいていはこうだと思う。
 さて、チャイナフリーやシュガーフリーとか、”フリー”と言う言葉がやけに目に付くが、フリーとは”排除”を指す。歯科界でもパラジウムフリーとか、挙げ句のはてにはクラウンブリッジの一部ではあるがメタルフリーなる言葉まで飛び出し、天然鉱物のジルコニアの登場でメタルそのものの排除されかねないような危険な表現もある。今日ではCADCAMなる計測(CAD)と研削(CAM)機器の登場が本格化し、4年程前はイマイチの精度だったが、ハイペースで臨床応用が可能となった。そこで、CADCAMを用いて、マテリアルを天然鉱物であるジルコニアを素材とし、ドイツ主要メーカーの場合の最大ブロックは47mm幅で9本ブリッジまで可能だ。しかしながら支台歯の形状やポンティックの数等で構造上、選択肢は限られる。当然ながら強度を求めるならば、やはり”メタル”に依存しなければならない。
 歯科技工の鋳造は当初は高カラットゴールドでのスタートであったが、キャストデンチャーも徐々にコスト主義で”非”貴金属へとミスリードされて”代用”合金の”貧乏”な嵐で今日に至っている。代表格がニッケルクロームであった。そのことは昭和30年代の国民皆保険制度のスタートと代用合金の開発、輸入と当然ながらリンクするように高カラットゴールドから積極的にリタイヤしてきた。そして乖離すればするほど歯科界は斜陽化の道を歩むことになる。
 人類が始めてゴールドに接し始めて6000年、さらにゴールドの溶解技術は紀元前4000年に現在のブルガリア黒海沿岸のVarna地方で発明されたと言われている。今後ともGoldは人間社会のあらゆる所で活躍し、人類の生活と共にある。今後も歯科界で、もっともポピュラーで、もっとも体に優しい金属として君臨し続けるはずである。バイオメタルはGold、リサイクルのきく地球にとても優しいエコメタルである。だからこそ、その価値をけっして忘れてはいけない。これからも永遠にGoldフリーはあり得ない。人類とともに歩んだ歴史を有するGoldを”非”貴金属化へのミスリードされ、さらにはゴールドフリーをけっして先人達は許してはくれないはずだ。

PS, 文中で「ゴールド」と言ったり「Gold」と書いたりしているのは、文書上の整合性にかけるが、めりはりを付ける為にあえて用いた。

アサヒプリテック株式会社 アサヒ掲示板  2007年10月1日 掲載