感謝の言葉ない落とし主に失望

主婦 加藤 幸子 62(千葉県流山市)

先日の深夜、夫が財布を拾い、交番に届けて帰宅した。夫によると、自転車に乗っていた時に見つけ、駅前の交番まで戻って届けたので帰宅が遅くなったそうだ。 その話を聞いていると、交番から電話があった。
「落とし主が今、取りに来たので電話を代わります」と言われて、話をしたところ、落とし主は、夫に「どうすりゃいいんですか」と言ったそうだ。夫は、思いがけない言葉に電話を切ろうとするほど不快に感じたようだ。

財布には、現金のほかにキャッシュカード、運転免許証が入っていた。落ちていた付近は、ひったくり事件の多発地域だ。 私の知人も家の鍵が入ったバッグをひったくられ、心配になって鍵を取り換えたと話していた。
そういう場所で落とし物をすれば、あきらめてしまう人が多いだろう。落とし物を見つけたからといって、何もいただくつもりはない。 ただ、感謝の一言があれば、どんなに良い気分になっていたことだろう。

以前、高校生の定期券を拾った時は、本人から「親切にありがとうございました」とのハガキが届き、うれしそうにしていた夫の顔を思い出した。 人の善意が通じる、明るい世の中であってほしいと思う。

読売新聞 2006年12月21日掲載