転ばぬ先に
悪徳商法から親を守るには・・・『成年後後見制度』

コノミさん(仮名)は最近、憂うつだ。毎日、母親(85歳)から「早く私の預金通帳を返して」と電話がかかってくるからだ。 母親は一人暮らしだが、春ころから訪問販売の被害が目につくようになった。業者が来ると家に入れて通帳を見せ、一緒に銀行に行ってお金をおろして払っていた。
テーブルには羽毛布団、浄水器、床下補強など、様々な領収書が置かれていた。母親を説得して通帳を預かったが、翌日から「返して」の矢の催促だ。返すのは簡単だが、返せばまた悪質商法の被害にあうだろう。母親は預金がなくなったら、年金だけでは生活できない。

コノミさんは、これから認知症が進むことも考え、成年後見制度を使いたいと弁護士に相談した。
事情を聞いた弁護士は「成年後見制度は、判断能力の程度によって後見・保佐・補助の三つに分かれています。
後見申し立て用の診断書をとってみればその目安がつきますが、お母さんはまだ一人暮らしができていますから、認知症が一番重い後見ではなく、中間の保佐かもしれません。 保佐の場合、後見と違って保佐人が財産管理をする権限を持つには、お母さんの同意が必要です」と言う。
コノミさんは「母は通帳を返せと言うくらいですから、同意しないと思います」と述べたが、 弁護士は「裁判所が選んだ弁護士などが財産管理をして」裁判所が監督するならいいと話す高齢者もいますよ」と言う。

コノミさんは、親の財産背理を他人に頼むのは複雑な気持ちがしたが、母親が納得するならそれもいいかと思い直した。 それに、妹たちはコノミさんが通帳を預かっているのを面白く思っていない様子だ。そのため、専門家に頼む方が妹たちも安心するかもしれないとコノミさんは思った。

(中山 二基子、弁護士)

読売新聞 2006年12月21日掲載