歯科技工物の海外委託
国に損害賠償請求へ

歯科技工物作成の海外委託について歯科技工士の有志は、国が適切な対応を怠っていたとして損害賠償を求め、法務大臣の長瀬甚遠氏を東京地方裁判所民事部に22日、提訴する。 提訴を決めたのは、東京都世田谷区で開業する歯科技工士の脇本征男氏が代表を務める「訴訟を起こして歯科技工士を守る会」。脇本氏は同問題で、「歯科技工士の精神的苦痛に相当する損害額は、一人当たり少なくとも200万円は下らない」としている。また、守る会では翌23日午後5時半から、東京・三軒茶屋の「三茶シャレード」で「訴訟を支援する会」を開き、訴えに至った経緯や今後の展開等について報告する。

技工士有志が22日に提訴

脇本氏は、海外において歯科技工士の免許を有しない「無資格者」が作成、修理又は加工した歯科医療の用に供する補綴物、充填物及び矯正装置を輸入し、歯科医療の用に供することが行われている実態について「国が定めた歯科技工士法に抵触するものである」と指摘。
 そして、この事態を放置していることについて、歯科技工士制度そのものを根底から崩壊させ、ひいては国民の公衆衛生の確保に重大な影響を与えることになる。
更に、歯科技工士に誇りを持っている有志にとって耐え難い苦痛であると訴えた。
その上で、歯科技工物作成の海外委託を厚労省が規制するよう、国が監督権限を適切に行使することを求めている。
海外委託問題については、日本歯科技工士会等が法的に問題があるとして厚労省に改善を繰り返し求めていた。
これに対し厚労省は平成17年9月8日、「国外で作成された補てつ物等の取り扱いについて」の通達を各都道府県衛生主管部(局)長に出した。
しかし、通達は「患者に対する十分な情報提供を行い、患者の理解と同意を得るとともに、良質かつ適切な歯科医療を行うよう努める」ように歯科医師を指導するよう指示したもので、海外委託を規制するものではなかった。
脇本氏は、歯科技工士法と同制度の意義について「歯科技工士としての必要な知識及び技能の試験を行い、その試験に合格した者に対して厚生労働大臣が免許を与え、その免許を有する歯科技工士等でなければ業として歯科技工は行ってはならないとある。更に、それに違反した者に対しては刑罰を科している」と主張。
海外委託を放置することについて「歯科技工士の資格を設け、無資格者による歯科技工を禁止し、業務を独占させるなどの歯科技工士制度を設けた意味がなく、制度の根幹を揺るがす重大な誤りが認められる」と訴えた。
訴訟代理人弁護士は工藤勇治氏と川上時朗氏。
国の指導義務違反や精神的苦痛による損害賠償を求めていく方針。
海外での歯科技工物作成行為が歯科技工士法で規制している歯科技工物作成行為に適用されるかどうかなどが、争点となりそうだ。

日本歯科新聞 2007年6月5日掲載