国を提訴する歯科技工士の覚悟

「恒産無ければ因りて恒心無し」。
 中国、春秋戦国時代の孟子が斉の宣王の問いかけに答えた時の成句だ。
 「恒産」とは安定した収入のことであり、「恒心」とは変わらない心のことで、 「一定の収入がなくても、不屈の精神でやっていけるのは学問や教養のあるごく少数の人だけで、一般の人は一定の収入が無ければ心がふらついてしまうもの」との意味合いがある。
 更に、孟子はこれに続けて、国を治める者が一般庶民の生活を安定させないで処罰ばかり厳しくするのは、人民を無視するやり方だと言っている。
 歯科技工物作成の海外委託について、歯科技工士の有志が6月22日、法務大臣を東京地方裁判所に提訴する。歯科技工物は歯科技工士の国家資格を有する者が「作成する」ということが歯科技工士法に定められ、無資格者による歯科技工や「指示書」によらない歯科技工は禁じており、これに違反すると罰則がある。
 有志は海外委託による歯科技工は無資格者による歯科技工などが行われている恐れがあると指摘。
 厚生省に何らかの規制を求めてきたが、放置されたままだ。そして、その厚生省の対応を無視してきたのは法を監督する国の怠慢として提訴した。
 国を相手に裁判をするということは大変な覚悟とエネルギーを必要とする。
なぜ、裁判という行動に至ったかを制度を施行する立場にあるものは考えてほしい。

日本歯科新聞 2007年6月12日 掲載 記者の目 より