中国発 医・食の危機
日本も警戒 個人輸入、把握困難

中国産の食品や医薬品の安全性について、世界各地で問題が噴出している。米国で中国産ペットフードを発端に問題が相次いで露見。日本でも中国製練り歯磨きから毒性物質が検出され、輸入業者が自主回収に乗り出した。日本政府はは5月以降、メーカーや輸入業者に徹底調査を求めているが、個人がインターネットなどで取り寄せる並行輸入までは把握するのは難しいのが実情だ。

5月29日、北京市南部にある民間病院内で、ニセ薬工場が摘発された。薄暗く、カビ臭い地下室に薬品入りポリ容器が20個以上並び、その上を蛾が舞う。製品は、肝炎から精神疾患まで治すという「秘方薬」だった。
 緊急閉鎖された病院を訪れると、河北省から来た肝炎患者(35)が、「7000元(約11万円)で治ると言われ、1万元(約16万円)以上払ったのに・・・・・」と呆然としていた。
 中国産の医薬品や食品の安全性については、日本では2002年に、ダイエット食品による肝機能障害が問題化して以後、疑問視されていた。だが、ドライフルーツ、ダイエット用食品、化粧品、医薬品から毒性物質が見つかり、疑問の声は世界中に広がった。
 本家の中国本土では、まさに爆発状態。「利潤第一」の模造品が横行し、@広州市内で注射液が原因で13人死亡(06年5月)A安徽省の製薬会社の注射液で十数人が死亡(同年夏)--------なぜニセ薬の死亡事件が相次いでいる。今月には、救命救急医療で使われる薬品にも偽物が出回っていると報じられた。
 中国には、医・食の安全を総合的に監督する「国家食品薬品監督管理局」という中央政府の機関がある。
 06年の摘発は、食の安全に関するものだけで約6万8000件。高級洋酒などブランド食品の模造品製造や、有毒物質を混入させた容疑などの製造拠点は約5900か所も見つかった。だが、ある共産党関係者は匿名で、「地方を中心とした多くの幹部や企業はこれまで、農民、民衆の健康など考えてこなかった」と本誌に語り、生産者はもちろん、監督官庁も安全管理を怠る体質があったことを認めた。
 今年5月には、同管理局の前局長がわいろを受け取り、ニセ薬を許可したことが明るみに出て、北京市第1中級人民法院(地裁に相当)が、前局長に死刑判決を下した。練り歯磨きでは、中国衛星省公認の歯科衛生団体が一部商品を勝手に「認可」したうえ、業者から報酬を受けていたことも分かった。官と業界ぐるみの不正が横行している。
 模造品作りのような犯罪とは別に、安全性を無視した生産やずさんな製品管理も、経済成長の中で拡大している。発がん性物質を含む添加物、禁止薬品などを使った加工食品や養殖魚、重金属や残留農薬に汚染された農産品が見つかっている。同月には、産業廃棄物の未消毒繊維が詰められていたぬいぐるみが発見され、親たちを震え上がらせた。

日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、中国はアメリカに次ぐ第2位の日本の食品輸入相手国だ。中国からの食料輸入額は2004年の約7860億円から06年の約9300億円へ2年間で18%増加した。日本の食料輸入額に占めるシェア(市場占有率)も15.1%に上昇している。医薬品の輸入額も04年の約250億円から06年の約350億円へ2年で約42%も急増している。
 中国産の飼料や食品、医薬品などが、原料などとして欧米など第三国に輸出され、そこで加工された製品が日本へ輸入されているものも多い。しかし、こうした中国産食品の「間接輸入」は統計に表れないため、把握は難しい。

讀賣新聞 2007年6月19日  北京=杉山祐之