従業員の心をつかむには

経営コンサルタント 萩原 勝

Q:このほど、父親の会社を継ぐために、役員として入ることになりました。 父は、「二、三年後にはお前に社長の座を譲り、自分は引退する」と話しています。 私には、社長の経験はありません。うまく父の後を継げるかどうか、正直言って不安です。しかし、従業員の協力を得て、業績向上のために最善の努力を払うつもりです。従業員の心を掌握するには、どのようなことに留意するべきでしょうか。

従業員の先頭に立って働く
A 1.会社の第一線で働くのは、従業員です。売上げや受注を伸ばすには、従業員の協力がぜひとも必要です。
 従業員は、役員の指示命令に従う義務があります。しかし、「役員が指示命令すれば、従業員は、それに従って働く」というほど、単純なものではありません。
 役員の指示命令に従わせるためには、第一に従業員の信頼を得る必要があります。
 父親の会社を継ぐ以上は、従業員の信頼を得るために最善の努力を払うべきです。
2.後継者として従業員の心を掌握するには、まず第一に、従業員以上に働くことが必要です。
 朝は早く出社し、終業後も働くことです。
 役員だからといって、遅く出社したり、早く退社するのは問題です。
 後継者が人一倍熱心に働けば、従業員は、「後継者は、真面目である」「本当に後を継ぐ気持がある」と考えるようになります。その結果、後継者への信頼感が形成されます。 また、現場には、経営改善の情報やヒントがあります。
 このため、時間を見つけては営業所、支店、店舗、工場などを回り、現場で働く従業員と話をするように努めることをお勧めします。
 若い後継者の中には、一日中事務所に閉じこもってパソコンばかり操作している人がいます。しかし、それでは従業員の心を掌握することはできません。
3.従業員との会話を大切にすることも大事です。自分の方から気軽に挨拶したり、話し掛けたりすることに努めるべきです。
 ざっくばらんな会話を通して、人間的な信頼関係と触れ合いが形成されるからです。
 この場合、年齢や性や学歴などにかかわりなく、すべての従業員に対して公平に接しなければなりません。特定の従業員とだけ付き合うことは感心しません。
 また、従業員に対し、乱暴な口の利き方をしたり、横柄な振る舞いをしたりしてはいけません。
4.公私混同をしないことも大切なポイントです。
 中小法人の場合には、「組織が小さい」「役員の自宅と会社の事務所とが場所的に近接している」という性格上、役員が公私混同をしやすい環境にあります。
 しかし、会社の金銭や物品を個人的に使用したり、勤務時間中に私的な用事をしたりすると、従業員は、「公私のけじめをしていない」として、後継者を信頼しなくなります。また、従業員自身も平然と公私混同をするようになります。
このほか、
@常に明るく振る舞うこと。仕事で不都合なことがあっても、暗い表情を見せないこと
A自分が言ったこと、発言したことに責任をもつこと
B決めたこと、約束したことは実行すること
C独断専行しないこと。仕事上重要なことを決定するときは、人の意見に素直に耳を傾けること
D仕事で失敗した場合に、その責任を従業員に押しつけないこと
 なども、従業員の信頼を得る大切な条件といえます。

全国法人会総連合 季刊誌 2007年夏号 No.657 掲載