感動を呼ぶ接客術

元リッツ・カールトン大阪支配人が講演

「最上級のおもてなし」で知られるホテル「ザ・リッツ・カールトン大阪」。 1997年に開業し、約2年で「週刊ダイヤモンド」誌や「日経ビジネス」誌などのサービス評価で1位となった。オープン準備期間から6年間、営業統括支配人として務めた林田正光氏が3月25日、モリタの実践型経営セミナーでマニュアルを超えたサービスの実践とブランドの構築などについて講演した。

林田氏はリッツ・カールトンのもてなしが最高といわれる所以に、すべてのスタッフが所持する「クレドカード」があるという、クレドとは信条、哲学と訳される。内容は「お客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することを最も大切な使命と心掛ける」など、具体的なマニュアルではないため、スタッフはクレドに照らし合わせ、どのように行動するべきか考えなくてはいけない。
 林田氏は「マニュアル通りのサービスはお客様も予測しているので、感動しない」とし、マニュアルを超えたサービスを提供された時に感動が生まれ、その感動を誰かに伝える口コミが発生すると語った。
 そのため、顧客をつくるのではなく、ファンや口コミを広げてくれるロイヤルカスタマーを獲得すべきとした。
 感動を呼ぶサービスとは客に「自分のためにやってくれる」という気持ちを抱かせるサービス。林田氏はその第一歩として、それぞれの客を名前で呼ぶことを挙げた。

その上で、林田氏は感動を呼ぶサービスはスタッフ一人の力では実現できないとし、リレーションの重要性を訴えた。その例として同ホテルのあるメイドの行動を挙げた。
 そのメイドは客が昼間外出している間に客室でベッドメイクをしていた際、ベッドサイドに封を切った風邪薬を発見した。彼女は自らの判断で毛布を増やし、加湿器を入れ、客を気遣うメモを残した。それだけでなく、ベルボーイやフロントのスタッフに連絡した。ホテル内で度々「お風邪をお召しのようですが」と気遣われた客は感動し、礼の手紙が速達で届いたという。
 林田氏は「パーソナルサービスを提供する上で、スタッフが誇りをもって自分の仕事を全うしようとする環境を構築することは欠かせない」と語った。

更に、ブランド力を構築するためには広報が欠かせない。2000年に同ホテルは2泊3日で1200万円の宿泊プランを発表し、多くのマスコミがこぞって記事にした。結果としてそのプランの購入者は現れなかったが、メディアに登場した経済的な価値は数千万円にものぼったという。
 また、同ホテルでは客が車で帰る際、発車する時と発車した後で2回おじぎをする。2回目は車中の客には見えないが、その周りにいる別の客に「きちんとしている」という印象を与えるという。これもブランド力の構築の一環と説明し、どんな行動も見られていることを意識する重要性を指摘した。

日本歯科新聞 2007年4月3日 掲載