被害妄想の母 認知症か
泥棒呼ばわりされる50代女性

(千葉・C子)

50歳代の女性。80歳代の母のことで相談です。母は元気で、日常生活は普通にできます。離れて暮らしていましたが、「物が度々なくなるのは空き巣か近所の嫌がらせ」と思い込むようになりました。ノイローゼ気味で眠れないというので近くに呼びました。
 しかし、今度は私を泥棒呼ばわりし始めました。物がなくなると言っても、ぞうきんや物差し、つめ切りなど。そんな物を取ってもしようがないでしょと、いくら言ってもわかってもらえません。
 事情があって私は祖父母に育てられたので、母とのかかわりは薄いのですが、それでも母にはかわりありません。面倒は見るつもりですが、顔を合わせれば私を疑うので腹が立ち、つい「ああ早く死んでほしい」と思ってしまいます。
 もともと疑い深い性格でしたが、これは認知症の始まりでしょうか。本人はそう思っていないので病院に連れて行けません。このままだと私も変になりそうです。

海原 純子(心療内科医)

疑い深いお母様に困っていらっしゃるのですね。あなたもお気づきのように、認知症に伴って被害妄想があると思われます。ご本人でなくとも、あなたやご家族が精神科に相談なさって薬など対策を立てることが必要でしょう。
 次に、あなたが母親にどう対応していくかが重要です。今なさっているように理屈で説明してもわかってもらえず、あなたがイライラするだけです。妄想は本人だけが思い込み、いくら他人が理論的に説明しても修正できないことが特徴です。
 これは病気の症状としての発言なのだ、と思って母親の言葉を聞いて下さい。母親の言葉だと思うと腹が立つものですが、病気がこう言わせてるんだ、と受け止めるとあなた自身が少し楽になるはずです。
 また、認知症を伴っている場合、「話題を変える」ことも一つの方法です。泥棒呼ばわりが始まったら、「では、ちゃんと調べましょう」と一度受け止め、夕食の話題などに変えると、矛先が変わることもあります。いずれにせよ、あなたが健康を損なわないよう医師に相談なさってください。

讀賣新聞 2008年1月21日 掲載