「かみつき」どう対処

子どもたちが集まる場で、しばしば起こるトラブルに「かみつき」がある。かみつかれた側だけでなく、かみついた側にとっても頭の痛い問題で、親同士の関係にも影響する。子どもが自分の思いを表現するための行動なのだと理解し、冷静な対応をしようと専門家はアドバイスする。

遊びの中のトラブル−−−−
相手の「痛み」気付かせて

遊んでいた積み木を崩されたことに腹をたてた1歳の女の子が、男の子の手にかみついた。2歳の男の子は仲良く遊んでいた友だちに、「あぐー」と予告した後で腕をがぶり。かまれた子は泣き出し、腕にはくっきりと歯形が残ってしまった。各地の保育園などでは、こんな「かみつき」トラブルが時折起こる。
 東京都板橋区の保育施設、東京家政大学ナースリールーム主任の井桁容子さんは「きっかけは、おもちゃや遊び場所の取り合いなど、子ども同士でいればよくある出来事。かむことは、まだ言葉で上手く意思を伝えられない子どもの表現方法のひとつで、完全になくすのは難しい」という。
 北九州市保育所連盟の保育士会が同市内の保育園に通う乳幼児約1万7000人を対象に行った調査によると、約20日間の調査期間中に、ほかの子にかみついた園児は計411人。かみつきは、生後半年を過ぎたころから始まる。1歳半から2歳の子では10%以上がかみついており、この時期に多発することがわかった。ただ、3歳までにはほとんどなくなっていた。
 調査をまとめた同連盟会長の藤岡佐規子さんは「かみつきは、発達の過程で一時的に起きうることが裏付けられる。ちょうど子どもが自己主張を始めるころです」と話す。
 とはいえ、かみつきが起きると、かんだ子ども、かまれた子どもの親同士の関係も気まずくなったり、かまれた方の親が保育園などの監督責任を問い詰めたりといった事態にもなりがちだ。
 東京都内の主婦は、1歳の長男のかみつきがひどく、子育て支援センターなどに連れていくたびに、親の間で「トラブルを起こす子」と言われた。預け先を転々としたが、「適当な所がなくなり、あきらめた」と話す。
 こうした状況は避けられないのだろうか? 井桁さんはまず、「かみつきは、思わず出てしまう行為。かむ方、かまれる方、どちらが悪いという問題ではないことを理解して」と話す。
 その上で、@日ごろから親同士で話し合える関係を築いておくA子どもが集団でいるときは、できるだけそばにいて様子を見る-----などを提案する。「かみついたら痛いよ」と、相手の思いを伝えることも大切だ。保育士には、かんだ、かまれたという結果だけではなく、理由や状況も聞く。経緯を知ることで、子どもへの対応の仕方も変わる。
 「しかりつけてやめさせるのは、子どもに『ものを言うな』と言っているようなもの。かみつきは自分の思いを表現したり、相手の痛みに気づかせたりするチャンスでもあると考えてほしい」と、井桁さんは話している。

讀賣新聞 2008年1月21日 掲載