釣りで得た師匠

無職 山田 紀夫 68歳(横浜市)

 退職して3年目のある日、私はクロダイを釣りに近くの堤防に出掛けた。初めての場所で釣り方がつかめず、しょんぼりと糸を垂れていると、「釣れますか〜?」と中年の男性が日焼けした優しい笑顔で声を掛けてきた。
 彼は私のさおさばきをじっと見てから、「ここは魚が底の方にいます。餌が着底したら糸を張ってアタリを聞いてください。大丈夫、必ず釣れますよ!」と教えてくれ、励ましてくれた。
 彼は釣りの腕前はもちろん、人柄も素晴らしく、何度か顔を合わせるうち、私は彼を「師匠」と仰ぐようになった。初対面から7年。今では良きライバルとして腕を磨く励みでもある。

讀賣新聞 2008年4月6日 掲載