夫の暴言 50年

大阪・W子

 70歳代夫婦。夫は80歳代。定年から15年が過ぎました。趣味のサークルを勧めても、すぐ辞めてしまいます。「バカなメンバーと一緒に習えるか」と言うのです。町内会の活動も勧めたのですが、協調性がなく、けんかになります。
 私は夫から50年間、言葉の暴力を受けてきました。最近、夜中になると思い出し、ひどい動悸がします。医師からは「精神的なもので死ぬことはない。文章に書けば心が休まる」と言われ努力しています。例えば、姑の葬式で「お前は他人だ。後ろに座っとれ」、生命保険に入ったときは「おれを殺す気か」などです。
 私はパートの仕事をして夫を助けてきたのに、夫は暴言について「覚えていない」と一切謝りません。そして「老後はほっといてくれ」と言います。しかし、長年連れ添った夫をみないわけにはいきません。心が乱れます。

野村 総一郎(精神科医)

 これを読んでいて腹が立ってきました。こんな男と50年。いや、あなたもよく耐えて来られた。まさに我慢の人生!という思いを深くしました。  ただその一方で、長年連れ添ったご主人の老後をみないわけにいかないと言われ、実際今でもいろいろと生活のアドバイスもされている。ご主人という人は相当の偏屈のようではありますが、ものすごく幸せな人でもあるな〜とも思えてきます。なぜって、あなたという伴侶を得たんですもの。言いたい放題で、なおも見捨てられていないんですから。
 ここでふと思ったんですが、ご主人も単に運の良い人というだけではなく、何か良いところもあるんじゃないか、ということです。あなたは「文章に書くことで心が休まる」とのアドバイスに従って、ご主人の口の暴力を克明に書いた。これには真実の迫力を感じます。その同じ筆の力で、今度はご主人の良いところ、多少は世話になったこと、気難しいが愛すべき点。そういうことも併せて書いてみては?少ないかもしれないけど、そういうことを再発見することで、動悸が多少は治まる可能性だってあるかもしれません。

讀賣新聞 2008年6月11日 掲載