海外技工物と日本のルール
一丸となって安全守る時

伊集院正俊 神奈川県歯科技工士会会長

 「海外から様々な形で日本に市場解放要求がある。医療もその俎上にあがろうとしている。そのような時に、『日本のルール』の中でしかその仕事を認めるわけにはいかない、という原則を立てている」。昭和63年6月24日、自民党本部での「歯科技工料実務者講習会」で橋本龍太郎自民党幹事長代理(当時)は述べている。(日本歯技・第230号・昭和63年7月)この発言は、いわゆる「7:3問題」大臣告示伝達時の講習会でのもの。橋本氏は「歯科技工料の位置付けが本当はいろいろ問題があることは、我々もよく承知している」としながら、海外技工物発注問題における「日本のルール」の確立の話題に多くの時間をあて、これから歯科医師会、歯科技工士会が力を合わせながら、一つひとつ解決して、共に歯科医療の向上に力を尽くしていくことの大切さを力説した。
 つまり、歯科医師会、歯科技工士会が協調し、「日本のルール」を確立しなければ近い将来予測される海外からの外圧を防ぐことはできないだろうと指摘したのだ。
 歯科技工士法は国内における歯科医療の中の「日本のルール」の一つであり、良質な歯科補綴物を作成するため、歯科医療の向上を図るために必要だから定められた法律なのだ。歯科医師の発行する指示書のもとに歯科技工物を作成すること(歯科技工士法第18条)が定められている。しかし、「指示書」を発行する側の法律である「歯科医師法」にはその規定がない。そこを確立(処方箋等と同じように明記するよう)しなさいと、橋本元総理は様々な場面で発言していた。このことが解決されなければ、日本の歯科医療の安全は確保されない。「7:3問題」で仲たがいをしている場合ではないという趣旨が橋本発言の重要な本質だった。
 現在、歯科技工士有志グループによる訴訟事案や保団連等の様々な団体の厚生労働省への対応をみても、このことを念頭においての行動はほとんど見受けられない。
 厚生労働省といえども、現行の法律のもとにできる限りの対応をしているわけで、「必要なら立法措置を講じてください」という発言も多々見受けられる。
 日本の歯科医療の安全を守るために「日本のルール」を確立し、その上で海外から輸入すべき必要な歯科技工物の許可・認可事業等については別途定めを設けるべきではないだろうか。日本の歯科医療の安全を守るために、今こそ歯科界が一丸となって力を合わせる時と強調したい。

日本歯科新聞 2008年6月17日 掲載