嫌煙感情エスカレート

宮崎・A氏

 50歳代男性。ここ数年、たばこが大嫌いになり、煙を吸うと気分が悪くなります。バス停で吸う人がいると風上に移動しますし、レストランで近くの人が吸い始めたら、吸わないようお願いします。これまでは、こんな方法でなんとか済んでいました。しかし、最近は感情が抑えられなくなりそうな時があります。
 例えば、火のついたたばこを車から投げ捨てるのを見た時は、拾って車内に投げ込みたくなります。歩きたばこの人を見ると、後ろからゲンコツを食らわしたくまります。もちろん、そんなことはしませんが、いつかやってしまわないか怖いです。自分の感情をどうやってコントロールしたらいいでしょう。ちなみに父はヘビースモーカーでがんで死にました。私は一度も吸ったことがありません。

野村 総一郎(精神科医)

 嫌煙は間違いなく世の趨勢。あなたがたばこを毛嫌いするのも全く当然のことです。したがって、「たばこに少しは寛大になっては?」などという回答はありえません。ただ、ここでの問題は、たばこ嫌いをどうするかではなく、その思いがエスカレートして暴力的な行動を取らないかという心配ですね。
 確かにあなたの怒りの感情は強烈ですが、これまでのところ、避ける、お願いする、など、行動に関してはとても穏やかで妥当です。これはあなたが感情コントロールの出来る人だということを物語っていて、今後もこれが変化するとは考えにくい。だから、あんまり心配も要らないと思いますけど、それでも不安だとすると、感情の置き換えを試みてはどうでしょうか。
 たとえば、喫煙者への怒りを喫煙への哀れみに変えてみるとか、ですね。「最低のマナーを身についていないなんて、何という哀れな」「かわいそうにオレより長生きできないな」とか考えてみるんです。いや、別にこの考えが真実だと断言しているのでなく、ともかく哀れむことによって、そういう人間にゲンコツ食らわしたってしょうがない、と思えれば、過剰反応のリスクがさらに減るのではないでしょうか。

讀賣新聞 2008年6月26日 掲載