唾液 活性酸素を撃退

テレビで体にいいと言われた食べ物が突然スーパーで品切れになるなど、何を食べるかに関心を持つ人は多い。しかし、食べ物は体内に取り込む際の「かむ」という動作が、どれほど健康とかかわっているかは意外と知られていない。
 食べ物を歯でかみ砕き、唾液を混ぜて、のみ込みやすい大きさの塊にする。下あごや舌が連動した「咀嚼」とは、こんなに複雑な動作だ。日本歯科大教授の小林義典さんは「咀嚼の神経回路は、呼吸や姿勢保持、血液循環などと同様、脳幹にある。咀嚼が、いかに生命維持に重要かを示している」と話す。
 ところがフォストフードに象徴される軟らかい食べ物の普及で、現代人の平均的な咀嚼回数は、戦前に比べて約6割も減っている。
 それによって生じる問題の一つが、食べ物をかみしめるほど多く分泌される唾液の減少だ。唾液には、糖分を分解するアミラーゼなどの消化酵素が含まれていることは知られているが、それは多様な機能の一部に過ぎない。
 小林さんによると、歯の汚れの除去や粘膜の傷の修復、歯の補強、抗菌作用や免疫強化のほか、ウイルスを直接攻撃してくる免疫細胞を増やす作用もあるという。
 消臭し効果もある。日常の食べ物には栄養素だけでなく、微量ながら発がん性物質を含む物も多い。その多くが、わずか30秒間、唾液に浸されるだけで毒性がほとんど消えるという。発がん性物質が作り出す活性酸素は、がんや老化につながるペルオキシダーゼなどの酵素は、その活性酸素を消す作用を持っているためだ。
 小林さんは「『一口30回以上かめ』といわれるが、唾液の機能を十分発揮させるためにも、そのぐらいの時間が必要ということ」と説明する。

讀賣新聞 2008年12月10日 掲載