定額給付金は景気対策か?
混同されている「生活補助」と「景気対策」

経済解説者 池内 正人

経済が不況に陥ったとき、その進行を食い止め、景気を回復させるために実施する政策が、景気対策である。財政政策としては、政府による支出の拡大や各種の減税。金融政策としては、日銀による政策金利の引き下げや金融の量的な拡大が、一般的な手法だ。
 今回の世界的な金融危機と同時不況に直面して、日本政府も対策を講じている。まず10月に成立した「総合経済対策」では、財政支出を1兆8000億円ほど追加した。  ところが世界経済の状況がますます悪化したために、政府もこれでは足りないと考えた。そこで総額5兆円の追加補正予算を組むことになったが、そのなかの目玉が大もめにもめた2兆円の「定額給付金」である。
 政府もマスコミも、これらの財政支出について、「経済対策」とか「景気対策」と表現している。だが、これらの政策は「経済対策」ではあっても、本格的な「景気対策」とは言えない。
 というのも最初の「総合経済対策」は、もともと原油価格の高騰で苦しくなった漁業者やトラック会社の経営を助けることが目的。この政策が景気を押し上げる力はほとんどゼロに近い。
 また追加された政策も、給付金や住宅ローン減税が中心で、GDP(国内総生産)を引き上げる効果は最大でも0.5%程度と試算されている。どちらも景気にとっては「ないよりマシ」の影響力しかない。
 たとえば日本のGDPは4-6月期に年率3.0%減少した。単純に計算しても、このマイナス幅を2.5%ほどに縮小できるだけの効果しか持っていないことになる。これでは、とても「景気対策」とは言えない。要するに、その本質は「生活補助対策」なのだ。
 定額給付金については、所得制限をするかどうかでもめた。これがもし「景気対策」であれば、高額所得者に支給するのはおかしいという議論は出なかったはず。  もし最初から「生活補助」と考えていれば、収入800万円ぐらいを上限とするべきだった。
 このように、いまの政策は「生活補助」と「景気対策」が混同されているから、奇妙なゴタゴタを生じてしまった。裏返して言うと、日本ではまだ本当の意味での「景気対策」が考えられていない。実は、そこに大きな不安がある。

2009年 No.663 財団法人全国法人会総連合 ほうじん 掲載