「母」の写真と外食する父子

自営業 浜本 紀子 67 (茨城県取手市)

私が営むお好み焼き店に、小学生に見える男の子と女の子が父親らしい男性と来ました。注文の品を調理しながら目をやると、テーブルに母親らしい女性の写真が置いてありました。
 男性から「お皿をもう一枚ください」と声をかけられました。持っていくと、男性はお好み焼きを少し刻んで皿に取り、写真の前へ。優しくほほ笑む写真と向き合い、3人は和やかに食事を楽しんでいました。
 私が「お母さんの前に水を置くね」と言うと、男性は「お酒の方が良かったかね」と答えていました。事情はわかりませんが、彼らは亡くなった妻・母を忘れぬよう、いつも写真を持ち歩いているのでしょうか。
 食事を終わると、男の子は大切そうに写真をしまっていました。私の心の中で「3人に幸あれ」と祈らずにはいられませんでした。

讀賣新聞 2009年2月11日 掲載