残された指輪

無職 大山桂治郎 73 (千葉県松戸市)

倅の結婚式の日、私はお嫁さんに「新婚旅行でおいしい物でも食べなさい」と5万円渡しました。お嫁さんからお礼で初めて知った妻は、「なぜそんな大金があるの。何か悪い事でもしたでしょう」とかんかんに怒りました。
 給料もボーナスも全部妻に渡していました。ただ、社長が「よく働いた」と度々くれた金一封は、へそくりにしていたのです。
 数十万円あると白状すると、妻にはダイヤの指輪を買わされました。しかし妻は直後に体を壊し、指輪をはめる事もなく亡くなりました。指輪は今も、タンスの中で眠っているだけです。

讀賣新聞 2009年3月29日 掲載