何十年後に後悔

会社員 原茂 敬浩 61 (東京都福生市)

妻と一緒に、近くの城跡公園に散歩に出かけた。小学校の頃、近所の友だちとよく遊びに行った公園だ。
 公園裏の林には、友だちと登った大きな木が残っていた。「登ったり傷つけたりしないでください」と書かれた看板もあった。その奥の木の幹に、樹皮のシワのようになって残る文字があった。昔ナイフで彫った、自分の名前だった。
 「かわいそうね。なぜ木を傷つけるのかしら」と、妻がその文字を読み始めた。慌てて近くのコブシの花に話題をそらし、その場を去った。子供の頃のこととはいえ、自分のしたことは妻にも明かせないほどのことだった。悔やまれてならない。

讀賣新聞 2009年3月29日 掲載