根付くかネット献金

政治部次長 前木 理一郎

「オバマが大統領選挙でネット献金を使って、日本でもマスコミで結構取り上げられたから、これはうまくいくかと思ってやってみたけど、なかなか難しいよ」
 昨年10月、インターネットを通じたクレジットカード決済による個人献金、いわゆる「ネット献金」を始めた自民党の福田峰之衆院議員はこう嘆く。献金に応じたのはわずか5人だという。
 福田氏のホームページには、月額980円の「ホワイトサポーター」から月額3920円の「プラチナサポーター」まで4種類の選択肢が並ぶ。オバマ氏のホームページと良く似ている。
 米大統領や、「西松建設」からの違法献金事件で公設秘書が逮捕された小沢民主党代表の「企業・団体献金全面禁止」発言で、注目を集めるネット献金。企業献金を禁止すれば政治活動を支える資金は政党交付金と個人献金のみになるからだ。意外に思われるかも知れないが、ネット献金は日本でも現行法で可能だ。与野党の国会議員が10年近く前から検討を進めているが、なかなか普及しない。
 二つの壁があるからだ。
 一つは、日本のクレジットカード会社の消極姿勢。自民党を離党した渡辺喜美・元行政改革相らの政策グループを結成した江田憲司衆院議員は、個人献金の受け皿づくりのため大手カード会社と1か月間、交渉を続けたが、結局、だめだったという。「決定的な理由はないが、一つは特定の政治家を応援しているような形にしたくないということだろう。(渡辺氏らとの)記者会見の後、問い合わせが殺到し、100件以上の振り込み献金があったが、ネット献金を受けられたならば、もっと献金件数は増えたはずだ」と言う。
 もう一つの壁が、日本に寄付の文化が根付いていない点だ。福田氏の場合で、集まっているのは月額6000円弱。かつてネット献金を行っていたほかの政治家も、「半年で5万円くらい」(世耕弘成自民党参院議員)、「手数料十数万円に対し、2人からしか献金がなかった」(菅民主党代表代行)といった状態だ。
 しかし、インターネットの世界は、時に、従来の常識では計れない爆発力を発揮する。米大統領選でオバマ陣営が集めた資金は7億4500万ドルで空前の規模される。日本でも何かをきっかけにネット献金に火がついて、「政治とカネ」のあり方が一変する可能性もある。
 オバマ氏は企業などが献金のために作る「政治行動委員会」(PAC)からの資金は受け取らないと宣言するなど、政治資金面でも改革を揚げた。その一方で、途方もない巨額の政治資金を集めなければ選挙に勝てない構図をより強めた一面もある。
 「政治とカネ」の問題を考えるとき、そもそもカネのかからない選挙の実現が理想のはずだ。ネット献金の将来を考えるにあたり、そのことは頭に入れておきたい。

讀賣新聞 2009年3月29日 掲載