奇跡を起こした
 キレイへの思い

ヘアーメイク&スタイリスト 穐田 ミカ

皆さんは「奇跡」を信じますか?
 実は私、まさに奇跡としかいいようのない衝撃的な出来事に遭遇したのです。その体験を報告します。
 以前に書きましたが、私は認知症のお年寄りの方にヘアーメイクを施すボランティアをしています。活動の一環としてある施設へ出かけた日のことです。この施設では、高齢の認知症の方々が食事や掃除、洗濯などをヘルパーさんと一緒に行うことで、症状の進行を緩やかにしたり、失った能力を再び引き出したりする取り組みを続けています。
 とてもアットホームな雰囲気のなかで、いつものように長テーブルを置いて鏡をセッティング。ホットカーラーやドライヤー、メイク道具を並べて準備完了です。
 「どうぞ、お座り下さい」椅子を引きながら、一人のおばあさんに声をかけました。その方は首が斜め下に曲がり、歩くときもヘルパーさんの補助が必要でした。鏡の前に座っても、自分の姿を見ることができないのです。
 「これからキレイになりましょうね!」
 私は下からのぞき込むように話しかけました。そしてヒザをついた姿勢でメイクをスタート。化粧水をつけ、薄くファンデーションを塗っていきます。
 おばあさんにとっては、入所して初めてのメイク。ヘルパーさんたちも「どんなに変わるんだろう」と興味津々で見つめるなか、髪をキレイに整え口紅を引いて、さあ出来上がり。
 周囲から「若くなったねぇ〜!」、「キレイだわ〜!」、「すごいねぇ〜!」と感嘆の声があがります。すると、おばあさんの首はスッと伸びて、鏡に映る自分にニッコリしたのです。
 「・・・・・」
 「ウソだぁ〜!」、「ありえない!」、「信じられない!」
 一瞬の沈黙を破って響き渡ったのは、驚嘆の声でした。
 何が起きたんだろうとアゼンとしている私に、ヘルパーさんが事情を説明してくれました。
 おばあさんの曲がった首は、骨折したような状態になっていて、真っ直ぐ伸びることは医学的に絶対ありえないのだそうです。
 でも、目の前に座っている本人は、何度も首をシャンと伸ばして鏡のなかの自分をニコニコしながら嬉しそうに眺めています。ビックリ仰天する周囲のことなんて気にする素振りもみせずに・・・・・。
 『奇跡って、その人の意志が起こすんだ』
 私はこの光景を見てそう感じました。キレイになった自分の顔を見たいという一途な思いが、もう首は元に戻らないという諦めを軽々と飛び越えたんですね。そのときに、奇跡が起きたのではないでしょうか。
 「ダメだ」、「できない」といった後ろ向きの考えでは、可能なことも不可能にしてしまいがち。「こうする!」「こうなる!」とプラス思考で未来を思い描くことが、奇跡を呼び寄せる・・・・・。  だから、毎日のお化粧もプラス思考で行いましょう。化粧水をつけるときも、マッサージをするときも、心のなかでツルツルピカピカになった自分の顔を思い描いてくださいね。  すると、奇跡が・・・・・!?

あなたの健康誌 主治医 平成21年5月号 掲載