認知症と共に
「納得」いかに引き出すか

和田行男 介護福祉士

デイサービスに通ってくるトモさん(仮名)に「トイレに行きましょうか」と声をかけると、「さっき行ったからいいわよ」と答えられます。ハギさん(同)に「お風呂に入りましょうか」と促すと、「あら、うちで入ってきたからいいわよ」と断られます。
 2人の言葉がその通りなら、至極もっともな返事なのですが、実は、言っていることと事実とは違うのです。ですが、2人とも認知症でそう思い込んでいるため、僕が「いいえ、行ってません」「風呂に入っていません」と言っても、僕の方が理不尽なことを言っているおかしな人、となってしまうのです。
 ではどうしたらよいか。
 まずは、「あちらでお手伝いを」とお願いすれば「あなたに言われたら仕方ないわね」と腰を上げてもらえる関係を作りました。そしてトイレや風呂場の近くに移動してから、トモさんには「お出かけするので用心に、用を済ませておきましょう」、ハギさんには「娘さんが、お客さんが来るからきれいにして帰ってきてねと言っていましたよ」などと声をかけます。すると、「そりゃそうだわ」「仕方がないね」と誘いに乗ってくれるようになりました。
 ポイントは、いかに本人に納得してもらえるか。その言葉遣いや環境作りが大切なのです。

讀賣新聞 2009年5月26日 掲載