中高年が誰しも経験する「もの忘れ」防止法

甲斐良一 医事ジャーナリスト

免疫力を強化し、脳の活性化日常でできる8つの処方

いまや日本は世界一の長寿国です。しかし、長生きしたからといって、良いことばかりではありません。老化に伴ういろいろな障害が出てきます。中高年になると誰しもが経験する「もの忘れ」もその1つです。
 そこで、この問題に取り組んでいる東京・西東京市の佐々総合病院で「もの忘れ外来」を開設している院長の平塚秀雄先生(脳神経外科学専攻)をはじめ、専門家に「もの忘れ防止法」についてお話をお伺いしました。「もの忘れ」には生理的なもの忘れと、病的なもの忘れがありますが、ここでは病的なもの忘れは除外しました。
@メモ魔になろう
 「メモは朝の起床時間から食事のメニューなどメモを取り、会った人の名前、話の内容を克明に手書きでメモを取ることです。パソコンではダメです。日記帳や手帳に手書きして、必要なことは繰り返して見たり、書いたりする習慣は日常のもの忘れ防止に実に効果的です」(平塚院長)
A笑い
 笑いは免疫力を強化して自然治癒力を高めることが知られています。群馬県高崎市の中央群馬脳神経外科病院の中島秀雄理事長は脳血管疾患のリハビリに落語を取り入れ院内の多目的ホール(客席50席)で毎月第1土曜日、入院中の患者さんと地元住民を対象に病院寄席を開いています。
 「落語の医療効果は笑いが出るのが早いことです。私は『笑いが出たら退院だ』といって治療経過のバロメーターにしています。健康な人並に落語に反応して笑いが出るようになったら、しめたものです。逆に落語を聞いても無感動で笑いもです、押し黙っている人は脳梗塞を起こしたり、認知症(ボケ)が始まっていることがあります」(中島理事長)
 日本医科大学リウマチ科名誉教授の吉野槇一先生もプロの落語家を招いて治療に当たっています。糖尿病の患者さんたちに漫才を聞かせて笑わせたところ、血糖値が下がったという新聞報道もありました。
 「笑いやユーモアは昔から健康にいいといわれてきましたが、記憶力を高める有力な手段でもあります」(平塚院長)
B歩く
 囲碁、将棋は脳を活性化するといわれていますが、それより歩くことのほうが、脳を刺激して、記憶力を高めることが分かっており、「もの忘れ外来」には運動指導者もいます。
C指の屈伸運動
 両手を前に伸ばし、肩の高さで親指を中に折り曲げて指の屈伸を50回以上、毎日朝晩2回続けてください。指先の運動は新しい脳の神経細胞の産生を促し、記憶力を高めます。
D噛む
 噛む力はゴリラが500キログラム、猿が150キログラム、人間は50〜70キログラム(神奈川歯科大学斉藤滋名誉教授)だそうです。
 人は噛むことで脳、特に知的活動を司る前頭葉の使い古した血液を掻き出し、それと入れ替わりに栄養と酸素をたっぷり含んだ動脈血が流れ込み、脳の血の巡りがよくなり、記憶力が良くなるといわれています。
E脳活性食
 DHA(ドコサヘキサエン酸)は脳細胞を活性化するので「頭が良くなる」と評判になった機能性成分です。「DHAを多く含むイワシ、サバ、サンマ、マグロなどには動脈硬化を防ぎ頭を良くして、記憶、学習力を高める作用があります」(平塚院長)
F食べ過ぎは禁物
 満腹は頭の回転を鈍くします。1日の総エネルギー摂取量は2400キロカロリー以内に留める。もの忘れの頻度は1日の食べ過ぎた量に比例します。特に肉など動物性脂肪の摂りすぎは認知症を早めます。
G朝食が大切だ!  朝食を英語でブレックファストといいますが、断食(ファスト)を破る(ブレイク)との意味。記憶力増強のために、朝食をしっかり摂りましょう。  

WEDGE August 2009 掲載