愛車解体切なく

無職 久保 克彦 70 (埼玉県秩父市)

退職して車に乗る機会が少なくなり、思い切って廃車にすることにした。自分で書類を作り、愛車に乗って、隣町にある解体工場に行った。粉砕器のそばに車をとめ、その場を後にした。
 新車で購入して約17年、通勤のはか、今は亡き父を乗せて、近県の観光地巡りにもよく出掛けた。迎えに来た妻の車に乗ったとき、思わずため息をもらした。身近な人との別れもつらいものだが、物言わぬ車との永遠の別離も寂しくて切ないものだった。  

讀賣新聞 2009年10月4日 掲載