外国人看護師「7年」の壁
在留期限 ベトナム人「悔しい」

小林 篤子

日本の看護師養成校で学び、資格を取ったベトナム人看護師たちが、7年の在留期間が切れるのを前に「日本で働き続けたい」と訴えている。研修名目で来日し、帰国は”既定路線”だが、同じ外国人看護師でも経済連携協会(EPA)で来日したインドネシア人らは資格を取れば就労期間の制限がなく、「不公平だ」との声もある。日本の労働市場開放の問題にも絡むだけに反対意見もあるが、彼女たちの叫びは外国人看護師の就労問題に一石を投げている。

言葉の壁は越えたのに・・・・・

千葉県の袖ヶ浦さつき台病院で働くファム・ティ・ミンフーさん(29)は、ベトナム・ハイフォン出身。現地の高校卒業後に日本語の勉強を始め、20歳だった2000年に来日した。秋田県内の看護専門学校を受験して合格し、03年に看護資格を取得。ミンフーさんら外国人看護師は入棺難民法に定める「医療」の在留資格で滞在し、免許取得後、7年に限って就労が認められている。
 期限が来年4月で切れるミンフーさんは「日本語を必死で学び、国家資格を取り、看護師として一人前の仕事が出来るようになった。助産師の資格も取りたいし、患者さんとの人間関係も築きた今、『帰れ』と言われるのは悔しい」と話す。
 「医療」の在留資格で滞在する外国人医師・看護師らは昨年末で計199人で、看護師が相当数を占めているとみられる。就業看護師約87万7000人に占める割合は小さいが、4年前の1.7倍に増えた。
 ミンフーさんは、永住許可を申請する予定だが、許可には、原則10年以上の在留などが求められる。学生時代の3年と合わせ計10年になるため、先輩看護師の中には永住が認められた人もいる。だが、審査には時間がかかる上、許可されなければ帰国を余儀なくされる。母国でも看護師として仕事はできるが、就労先があるとは限らない。
 同病院には、ミンフーさんと同じ立場のベトナム人看護師が3人いる。3年後に在留期限を迎えるグェン・タン・ヴァンさん(26)も「7年の壁がいつも心にひっかかっている」。同病院の竹内美佐子看護部長は、「やる気がある優秀な看護師を外国人というだけで帰国させるのは忍びない。病院にとっても大きな損失だ」と話している。

「研修」継続を/制限おかしい

国が外国人看護師の就労を「研修」として期間の上限を設けているのは、日本での看護技術の習得を国際協力の一環と位置づけているためだ。本国に戻り、学んだ技術を生かしてもらうという基本姿勢がある。だが、専門技術を持つ外国人労働者の受け入れ拡大策の一環として、法務省は06年に在留資格に関する省令を改正。6年以内だった外国人医師の就労期間の制限を撤廃し、看護師も期間を4年から7年に延長した。
 規制撤廃を訴える声に対し、日本看護協会の小川忍常任理事は「外国人看護師は研修の一環として受け入れるという国の立場を堅持すべきだ。医療現場の看護師不足は深刻だが、それを外国人で補うのではなく、潜在看護師の復帰などに向け、労働環境を改善するのが先」と反対する。
 外国人看護師の受け入れ問題に詳しい安里和晃・京大准教授は「国家資格という要件を求めながら、就労期間を制限するのはおかしい。永住権も視野に入れた長期間の就労を認める制度改正が必要」とし、少子高齢化が進む中、「専門職を使い捨てるようでは優秀な人材は確保できない。もっと先を見据えた議論をすべきだ」と指摘している。

讀賣新聞 2009年10月7日 掲載