HV車につける音 どうする

小野 卓哉

「静かすぎて危険」との指摘から、人工音の必要性が論議されているハイブリッド車(HV)や電気自動車。国土交通省は今月中にも、音量などの基準を盛り込んだガイドライン(手引)を打ち出すべく、作業を進めている。これにより人工音付きのHVが走る環境が整うと同省は言うが、課題はまだまだ山積みだ。
 HVなどは発進時や低速走行時にモーターを使うためエンジン音がしない。独立行政法人・交通安全環境研究所の実験では、HVのトヨタ自動車「プリウス」の発進時の音量は約30デシベルで、人ささやき程度の大きさ。視覚障害者らが接近に気づくのが遅れるのでは、と心配する声もある。
 このため同省は昨年7月、大学教授らが構成する「ハイブリッド車等の静音性に関する対策検討委員会」を設置。検討委では、論議の結果、車の走行を想起させる音を出すという基本方針を打ち出した。
 国交省が策定を急ぐガイドラインには、検討委の議論をもとに「時速20キロ以下の走行時や後退時に自動的に鳴るようにする」「低速時のエンジン音と同程度の音量」などの基準が盛り込まれる見通し。ただし、義務化に向けて直ちに動き出すわけではなく、販売済みの車への対応も先送りされそうだという。
 そこで想定されるのが、新たに音を出すようになったHVが街なかで混在する事態。全日本視覚障害者協議会総務局長の山城完治さん(53)は「無音の車も混在して走るようでは、安全対策として十分とは言えない」と訴える。
 メーカー各社によれば、例えばエンジン音に似た音を出すこと自体は、技術的に困難ではないという。だが、ガイドラインには、具体的にどんな音にするかまでは盛り込まれない。「各社にそれぞれ独自に開発を進めてもらい、自然とよいものに絞られていく流れを作りたい」(同省幹部)との考えからだが、山城さんは「店のBGMなど、ほかの音と勘違いするような音にはしないで」とクギをさす。ちなみに検討委には、「タイヤと路面の接地音」「ウインカーの作動音」などのほか「『車が通過します』というアナウンス」「馬のひづめの音」といった案が一般から寄せられている。
 あるメーカーからは、「開発にはカネがかかる。国の勧めるエコカーを作ってきた我々が、なぜ新たな費用負担を迫られなければならないのか、という思いは正直ある」との声も漏れる。
 長年、静かさを追求してきた各社。「自動車の歴史で、あえて音を出そうとする試みは初めて」と自動車ジャーナリストの川端由美さんは指摘する。うまく方向転換できるだろうか。

讀賣新聞 2010年1月8日 掲載