日歯連の急転向 目算狂う

日本歯科医師連盟(日歯連)の1月22日の理事会。自民党の石井みどり参院議員(日歯連職域代表、2007年当選)は不意に退席を求められた。
 いつもなら秘書を残すが、この日はそれも許されない。石井は「いよいよ来るものが来た。この後の理事会はかなり紛糾する」と感じた。

日本歯科医師連盟 
 日本歯科医師会の清治組織。会員数は約5万5000人。1959年に参院選全国区に自民党公認で職域代表を当選させて以降、同党を支持。2007年参院選で職域代表の石井みどり氏は約22万8000票を獲得して当選した。
 石井の退席後、堤直文会長ら執行部が提起した議題は「民主党との選挙協力について」。 「自民党から民主党へ」。方針転換を諮るには、石井の存在は邪魔だった。
 しかし、議論は執行部の思惑通りには進まなかった。執行部の中でも民主党との連携に積極的といわれる三塚憲二副会長は不満げな表情で部屋を出てきた。
 最大の理由は地方からの反発だ。「地方では自民党との関係がある」「協力依頼があっても、乗れないかもしれない」
 加えて、「政治とカネ」の問題をめぐる民主党の迷走が影を落とした。
 「鳩山政権はどうなるのか、政局の先行きが見えないではないか」
 1月15日には、民主党の石川知裕衆院議員らが逮捕され、理事会翌日の23日には小沢民主党幹事長への東京地検の事情聴取が予定されていた。
 自民党を選挙で支持してきた各種団体。今夏に迫った参院選への対応が喫緊の課題だが、混迷する政局に翻弄されている。
 政権交代後、これまで日歯連は民主党への急旋回ぶりが際立っていた。
 鳩山内閣発足2日後の昨年9月18日には次期参院選比例選で自民党から組織内候補を擁立するという方針を撤回。直後から、10年後の診療報酬増額に向けて民主党議員への波状攻撃を仕掛けた。約30人に狙いを定め、その頂点のターゲットはもちろん小沢だ。
 予算編成大詰めの12月下旬。面会者の要望をこなしていた小沢は、日歯連の幹部の顔を見るなり根負けしたように言った。
 「わかっているよ。ちゃんと歯科をどうにかするように言ってあるから」
 日歯連の幹部が10月上旬に小沢に初めて会ってから3度目の念押しで小沢から言質を取った。その言葉通り、年末に決定した10年後の診療報酬改定は、歯科の診療報酬が2.09%増の大幅アップとなり、32年ぶりに医科の伸び率を上回った。
 堤は「選挙になればどこかを選ばなければならない。診療報酬が医科を上回るところまで考えてくれた政党が応援してくれというなら、そちらを応援するのはやむを得ない」と語る。
 陰に陽に伝わってきた小沢の意向は「参院選で民主党が比例選に擁立する歯科医師出身者を日歯連が推薦する」ということだ。
 <12月の診療報酬改定で実際に結果が出れば、地方組織を説得できる>
 「政治とカネ」の問題で、こうした執行部の計算に狂いが生じてきている。今後、2月、3月に評議員会など重要な機関決定会議が続く。
 「小沢さんの問題がどうなろうと4年間は民主党政権は続くだろう。話はいずれまとめる」
 日歯連のある幹部は、走り始めたコースを引き返せないと自らに言い聞かせるようにつぶやいた。
  (敬称略)
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参院選に向け、揺れる政党支持団体の姿を追った。

讀賣新聞 2010年1月28日 掲載