同僚に大好評

三宅剛さん(60)は大手出版社「学研」のグラフィックデザイナー。2001年5月の連休明けは一生忘れられない。会社でカツラデビューを果たしたのだ。
 直前、隣の席の後輩にカツラを着けた写真をこっそり見せた。「わっ・・・わかいですね」。そんな反応に勇気づけられ、みんなの見ている前で装着することにした。パチン、パチン・・・地毛にホックを留める音とともに頭がたちまち黒々とした。「すごい、ふさふさですよ!」。大声を出すなって言ったのに、遠くからも人が集まってきた。ほめ言葉が飛び交うと、照れくさいやら、恥ずかしいやら。
 だが、不都合もあった。室内で着けていると、汗で蒸れてしまうのだ。そこで着けたり外したりしていたところ、混乱が生じた。別の部署が社員が隣にやって来て、「三宅さ〜ん」。この人のまぶたには薄い頭部の方が焼き付いていたらしい。「私ですが」と進み出ると途端に目を白黒させた。
 しかし08年夏、新社屋の完成とともに環境が変わる。空調がよく利いて、長く着けていても平気になったのだ。最近の若い社員はもとの姿を知らない人ばかり。「いきなり目の前でカツラを取ったら、驚くだろうなあ」。デザインを考えるかたわら、いたずらを思いついにニヤッとしたりしている。

讀賣新聞 2010年4月20日 掲載