10年前の退職を後悔

(茨城・M子)

30代女性。10年前会社を辞めたことをいまだに後悔しています。正社員で営業のアシスタントでしたが、営業マンの些細な一言がきっかけで退職。季節が巡るたび、棚卸しや社内の行事などを思い出します。
 今は別の職場でパートをしていますが、「正社員時代が一番幸せだった」との思いにずっと縛られています。当時はお金の心配もありませんでした。パート先の同僚からも、「なぜそんないい会社を辞めちゃったの」と言われました。
 年金生活の両親が家計のやりくりで苦しむのをみると、娘がしっかりしていれば貧乏せずに済んだのにと思います。私が短時間のパートしかせず、働く時間を延ばそうとしないので、職場内は「早く辞めてくれればいいのに」という雰囲気。家庭でも職場でも迷惑な存在なのだと思うと苦しいです。

最相 葉月(ライター)

過去が幸せだった感じられのは、おそらく今が楽しくないからでしょう。でも考えてみてください。前の会社が当時と同じ状況を保っているとは限りませんよ。過去には戻れないのですから、昔のことはよき思い出として胸にしまい、今を少しでも楽しく過ごすことを考えてみませんか。
 そのためにもまず、あなたを苦しめるご自分の考え方のくせを知ってください。両親にしても同僚にしても、誰一人あなたに直接不満をぶつけたわけではありませんね。それなのに相手の気持ちを悪い方にばかり想像して頭がいっぱいになっている。これでは悩みのループから抜け出せません。時がたてば冷静に考えられる人であることはお手紙から明らかです。そもそも前の会社をやめたことを後悔するのも、営業マンの些細な一言にとらわれすぎていた過去のご自分に気づくことができたからですよね。
 働く時間を延ばせない事情はお手紙からはわかりません。でも会社はこれまでのあなたを評価し、必要と考えるからこそ雇ってきたはず。あなたのよさを知る人はあなたのそばにいるのです。限られた時間でもその期待に応えることが今のあなたの務めではないでしょうか。

讀賣新聞 2010年7月14日 掲載