ロボットにみとれて

佐藤 良明

ロボットが介護福祉の分野に、進出する。不自由な腕に代わり、食事を口に運んでくれる。脚の装具にモーターが付いてリハビリ走行を助ける。そうしたロボットの研究開発が盛んだ。
 SFコミックでも格好のテーマらしい。先ごろ出た短編集「スキエンティア」(戸田誠二)に、末期患者の生活介助からみとりまで寄り添う人間ロボットの物語があり、引き込まれた。
 独身の中年男性石田は、末期がんに侵されている。余命は新しい人生を過ごすと決め、ロボット派遣会社と契約。女性の姿形をしたロボットが、パートナーとしてやって来る。 様々な介助を受けていた石田は、息を引き取る直前、傍らにロボットに「いてくれてよかった」と感謝する。私はこの姿に、逆に深孤独を感じた。
 そして死の場面。ロボットは死の三兆候を確認し、派遣元に電話する。「石田様が、いま亡くなりました。自宅です」
 作品は、ロボットによるみとりを肯定も否定もせず、淡々と描く。科学技術は人間生活にどこまで入り込めるのか、静かに問いかけているようだ。
 経済産業省は昨年度から5年計画で「生活支援ロボット実用化プロジェクト」を始めた。今は安全性評価といった基礎レベルだが、研究開発は将来、人型の介助ロボットを見据える。
 では、もし石田の物語が現実のものになったら? 「時代の流れだから受け入れる」と考えるか、「生身の人間にみとってほしい」と願うか。皆さんはどう思うだろうか。

讀賣新聞 2010年7月15日 掲載