THE WALL STREET JOURNAL.(本誌提携、10月4日掲載)
人民解放軍 影響力増す

ジュレミー・ページ記者

中国は、最近も尖閣諸島の領有をめぐり日本と大騒ぎを起こすなど、近隣諸国にとってますます手に負えなくなっている。その陰には、共産党指導部交代を控えとみに自己主張を強め、外交政策への影響力を増す人民解放軍の存在がある。
 東シナ海の尖閣諸島沖で中国漁船が日本に拿捕されたことに端を発する騒動は、中国の政策決定を軍が左右する度合いが強まっていることについて日本をはじめ各国政府の懸念を増大させた。
 2012年の党指導部交代に向けて、軍の政治力的影響力拡大が予想される。このプロセスは、10月15日開幕の党中央委員会総会で本格化する。同総会では、胡錦濤国家主席の後継者として最有力視される習近平・国家副主席が、党中央軍事委員会の副主席に選出されるかどうかが注目されている。
 軍はこの数ヶ月、遠慮のない発言を際立たせるようになり、外務省を鼻であしらう態度を見せたり、経済的影響力の使い方について、国際社会の懸念をかき立ててきた。
 9月24日のシンガポールでの有識者会合で、田中均元外務審議会は、尖閣諸島をめぐる日本の対応を擁護した。朱成虎・国防大学教授(少将)は質疑で、田中氏を激しく批判。先に発言した唐家旋元外相もかすんでしまった。
 中国の現役将官が激しい言葉を使うのは最近よくあるパターンだ。5月訪中した米高官との会議で、関友飛・海軍少将は、「覇権主義的」な米国が中国を敵視していると非難し、同席した中国の外交官たちをまごつかせたという。
 6月のシンガポールでのアジア安全保障会議では、米国による台湾への武器売却をめぐって、朱教授と馬暁天・副参謀長がゲーツ米国防衛庁と対決した。ゲーツ氏や米国防総省高官は最近、米中関係改善を妨げる軍と、協力関係進展を望む政治指導部との間に溝があるとぼやいた。
 「軍は政策決定、とりわけ外交政策で影響力を持ち過ぎている」と清華大学の楚樹龍教授(国際関係)は語る。楚教授は、党中央軍事委員会の委員11人のうち、文民が胡錦濤主席一人にとどまることが最大の問題という。「胡主席は多忙で、軍に目が行き届かない。軍は、文民指導者の関与なしに独自の決定を下してしまう」
 軍の発言に遠慮がなくなっている実態を前に、文民指導部と軍指導部による緊密な意見交換を可能とし、危機に際してより迅速で調和の取れた対応を取れるようにするための徹底的な機構改革が中国でも必要になっていると指摘する専門家もいる。
 米国の国家安全保障会議のような組織を創設して、政府機関の調整を行えるようにする案がその一つだ。党政治局常務委員会に制服組を加える案もある。
 しかし、中国の経済力が大きくなるにつれ、国家の利益の範囲は広がっており、改革の有無にかかわらず、軍の影響力増大は避けられないとの見方で、多くの専門家は一致する。

讀賣新聞 2010年10月6日 掲載