豪州ー日本戦、主審にブレ

日本サッカー協会・松崎康弘前審判委員長

W杯アジア最終予選豪州ー日本戦(12日、ブリスベーン)の主審の判定について、多くの質問をいただいた。
 22分の栗原、25分のミリガンのホールディング、29分の今野のトリッピングはいずれも反スポーツ的。警告は正しかった。
 55分、クロスボールにミリガンが飛び込み、ヘディングでクリアしようとした内田の肩の辺りを蹴ってしまった。ファウルだ。しかし、ミリガンのプレーの意図はボールにあり、無謀さはなく、警告には値しない。サウジアラビア人の主審はイエローカードを示したが、判定にためらいがあったためなのか2枚目なのを忘れ、誰かに言われたかのように、しばらくしてレッドカードを示した。これが主審の心理に影響したのかどうか分からないが、このあたりから判定にブレが生じ始めた。
 日本がPKを与え69分。内田は左腕をアレックスの体に回したが、押さえて動けなくしたというものではない。腕が回っているとファウルとされる可能性はある。注意しなければならないが、これでファウル、警告とするのは無理がある。
 83分の本田の警告はそもそもファウルではないし、89分の栗原の2度目の警告(退場)は相手のオフサイドであり、栗原のプレーに無謀さはない。
 そして、本田がFKを蹴れずに試合が終了。アディショナルタイムの表示は3分で、アディショナルタイム中の選手交代により1分近く空費されたので、試合終了のホイッスルは4分を過ぎたところ。競技規則上、ここで終わらせても問題はない。
 だが、相手はファウルを犯している。FKを蹴らせずに終了してしまえば、ファウルの「やり得」だ。主審の裁量の範囲で時間を延ばし、FKを蹴らせてから終わらせるべきだった。
 サッカーにおける主役は選手。主審は競技規則を一貫して施行し、プレー環境を整備する。この試合では、不安定な判定でしゃしゃり出たという感が拭えず、とても残念に思った。


讀賣新聞 2012年6月26日 掲載