補綴構造設計士・歯科技工士川島 哲の世界
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たっちゃんの関係法規
  そのM 「二種類の歯科技工士」

内藤 達郎
(PSD)日本補綴構造設計士協会 相談役(法律)

FDIが発行している「Basic Fast Sheets」という世界の歯科事情データ集には、歯科技工士という職業は、免許が必要な職業とはみられていない。大多数の国々に、なぜ歯科技工士という免許がないのだろうか。逆にいえば、日本になぜ歯科技工士という免許があるのだろうか。
 前述したように、歯科医師の本質的な業務は「歯冠修復」「欠損補綴」「歯列矯正」の三つであり、それらの仕事の大半はいわゆるラボラトリー・ワークである。そもそも歯科医業というのは、歴史的にみると基本的には歯科技工を主にしたものであり、そこに、それに関連ある治療行為が付随していたにすぎない。歯科医業の本質が技工業務にあることを思うと、技工業務をする免許として歯科医師という免許があるところに、さらに歯科技工士という免許を作る必要はなかったのではないか。
 しかし、わが国では昭和30年に歯科技工士の免許を制定し、その後大臣免許にもなった。この免許制度には新生歯科技工士の業務の確立という一面と、既得権の封じ込みという一面もあった。その時代背景を追ってみよう。

 「歯科技工法」制定以前に「日本歯科技工師会」(通称「花桐会」)なるものがあった。後述の最高裁判決から解るように、彼らはそれ以前から脈々と続いていた「入歯細工業」としての既得権を死守しようとしたのである。しかし、すでに制定されていた「歯科医師法」のもとで組織作りを果たした団体は、「独占的な歯科医業」の確立のために、「花桐会」を消滅させる必要があった。それに代わって誕生したのが「日本歯科技工所連盟」を母体とした「日本歯科技工士会」なのである。その根拠法が「歯科技工法」なのである。
 「歯科技工士法」から「士」を削除された「歯科技工法」は、身分法ではなく業務法に収斂したものになってしまった。同法第1条の「適正条項」などは他の医療従事者法にはなく、第20条の恣意的解釈(後述)などにより「既得権益の復権許すまじ」を特徴としている。いずれにしても、この事により「歯科技工士」の免許だけは確立されたのである。

 これにより、わが国には二種類の歯科技工士が出現することになった。すなわち、歯科技工士という名の技工士と、歯科医師と呼ばれる技工士がそれである。一つの国の中に二種類の技工士が存在すれば、そこに業務範囲や業権に関して縄張り争い的なトラブルが起きるのは必然といえよう。委託技工料問題(大臣告示でいう7:3問題)の原点がここにある。歯科医師という技工士が、これまで長い間営々として業権の拡張に努力し、本来は非医業である歯科医業のなかへ「医療的業務」を取り入れて徐々に変身してきたことを思うとき、歯科技工士という免許を獲得した技工士が、独立してその業務を遂行できるための業務拡張を考えたとしても不思議ではない。委託技工料問題や海外発注問題は、医療保険制度だけの問題ではなく、歯科技工士という免許の存立基盤にかかわる問題としてとらえるべきであろう。 
 *「二種類の歯科技工士」という呼称は飯塚哲夫氏(歯科医師)の分析によるものです。

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