補綴構造設計士・歯科技工士川島 哲の世界
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たっちゃんの関係法規
  そのB 法律上の争訟とは

内藤 達郎

国側は「歯科技工士法が国民の公衆衛生を確保するために歯科技工に関して資格制を採用しているという一事をもって,直ちに個々の原告らの固有の法的利益が導かれるというものではない・・・」と本件が法律上の争訴に当たらないとしている。
  そして「歯科技工の海外委託及び補てつ物等の輸入使用によって, 国民の公衆衛生が害されるおそれがあり・・・原告ら自身の権利又は利益に関わるものではない以上・・・そもそも金銭賠償をもって慰謝すべき損害に当たらない」と、損害賠償事案としての当事者能力を否定している。敗訴の原因がここにあるとしても、これは提訴の方法論の問題であり、裁判の本質を回避している面は否めない。
   国側の主張に一貫しているのは、歯科技工士法を恣意的に軽視している点である。行政法の特別法である歯科技工士法は強制法規(公法)であることはもちろんであるが、国家資格を定める社会法としても位置づけされている。法律は命令・規則・条例より優位にあることを軽んじてはならないし、法の恣意的な解釈は不条理を生むことにしかならない。
   しかるに、ここでいう法的利益とは、歯科技工士法上明確な輪郭をもって明文化された規制を履行し、法的義務を行使することで得られる権利・利益のことである。その法的利益を導くために、歯科技工士は国民の公衆衛生を確保に寄与し、歯科医療における安心・安全を担保しなければならない。歯科技工士の資格制度はその権利・義務を内包している。
   国側の海外委託に関する歯科技工士の訴えに対して、訴える資格(当事者能力)が無いとする「問答無用論」は、司法による門前払いを意図する暴論というべきであろう。
   原告は司法により海外委託の悪影響のおそれを喚起し、なおかつ行政府の無作為を糾弾し、行政府ないし立法府における改善への施策を促すことである。
   衛生行政は国民の公衆衛生における安心・安全を旨としなければならず、その観点から海外発注を歯科医師の行う技工行為の一部とし、その決定は歯科医師の裁量によるという国側の答弁書の趣旨には、あまりにも意図的狭義な解釈でありかつ偏狭に過ぎると言わざるを得ない。この裁判の「争訟ポイント」はこの点でなければならない。
  なお、次回は「歯科技工士法という国内法の限界」についての所見です。
 

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