補綴構造設計士・歯科技工士川島 哲の世界
PSD (PSD)伝達事項 川島セミナー会場 著書紹介 セミナー 執筆記事 気になるニュース トピック ホーム

たっちゃんの関係法規
  その29 「訴えの利益とは何か」 

内藤 達郎
(PSD)日本補綴構造設計士協会 相談役(法律)
  原爆の子の像

歯科技工士80人が国内において安全で良質な歯科技工の確保を求めて、最高裁判所に上告していた「海外委託技工問題訴訟」について、2月15日に最高裁は上告規定事由に該当しないとの理由で上告を棄却し、上告受理の申し立てを受理しないとの判決を下した。この最高裁判決は、東京高裁判決を是認し、国内とは異なり、製作者の資格も使用した材料基準も問われない海外で作成された技工物が国内で流通することを、事実上、容認したことになる。

 本シリーズの「そのB 法律上の争訟とは」で述べたように、海外歯科技工訴訟で東京高裁は「法律上の争訟」に該当しないとした。そしてこのたびこれを支持して最高裁は違憲および理由の不備という法令違反は「上告規定事由」に当たらないとした。つまり歯科技工士法の本質を吟味することを避け、「訴えの利益」がないとするいわゆる門前払いで処理したのである。

 訴えの利益(確認の利益)は、客観的利益(具体的実質的利益)と当事者適格(主観的訴訟要件)が備わったとき始めて成立する。それが存在しなければ判決は下されない。当事者適格では、特定の当事者間の法的紛争の解決に判決が必要か否かを問われるのに対し、訴えの利益では、誰が当事者であるかではなく、具体的な紛争の解決に判決が必要かどうかが問題になる。

 最高裁は、原告の権利・義務ないし法律的地位に関し危険・不安があり、確認判決によって、即時にこの危険・不安を有効・適切に除去しうることを挙げている(最判昭和30・12・26、民集9-14-2082)

 以上の観点から、このたびの最高裁判決は厚生行政の既定路線に追随した不当なものと言わざるを得ない。原告の法的地位が不安定になっていて、既判力による権利関係の確定がその危険や不利益を除去もしくは防止するために必要であったはずなのに・・・。

Copyright UNIDENT Co.,Ltd. All rightss reserved