補綴構造設計士・歯科技工士川島 哲の世界
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たっちゃんの関係法規
  その41 「歯科医療における補綴とはなにか」 

内藤 達郎
(PSD)日本補綴構造設計士協会 相談役(法律)

歯科医療の特殊性から補綴に関して、「歯・技分離論」なるものを検証してみる必要がある。
実際の技工は歯科技工士が行うことが多いなどの理由で、歯科医療から補綴技工を切り 離すという考え方がある。「脱保険計画診療」によれば、補綴技工料・材料費などの上昇 に診療報酬が追いつかないのであれば、自由診療に切り替えるべきとの考え方が述べられ ている。歯科医師は保険給付より患者負担増がふさわしいというわけである。

歯科医療における補綴とは何かという根本的な問題に踏み込んだのが、「歯・技分離」である。「歯・技分離論」では補綴技工料を歯科医師による維持・管理料と、技工士による技工・材料とに分解し、後者の一部を保険給付から除外し、浮いた財源を初診料・再診料にみられる医科・歯科間の格差是正や予防給付に振り向けることを想定している。

「歯・技分離論」の柱は「補綴物はモノである」と割り切り、モノと技術を分離しよう とする点にある。歯科医師の技術料は歯冠形成までとし、技工部門と材料費はモノとして 切り離すが、7対3の「3」は管理料であるから技術料に含める。つまり、支台形成から 先の技工に関しては歯科医師が歯科技工士に対して技工指示書を発行するわけであるが、 そこから先については歯科技工士に一定の請求権を与えるという考え方である。これによ って歯科医師は大臣告示に基づいた管理料以外の差益は期待できなくなり、技工士は材料 価格が安定しさえすれば適正な技工料が確保できることになる。

しかし、この考え方にも問題がある。それは補綴物への保険給付を制限したり、完全に 給付外にする場合、「補綴診療」をどこからどこまでとするかという点である。補綴診療も診断の開始から装着までの一連の行為が、ひとつながりになって完了するものと考えるなら、歯科医師の処置だけを「補綴ではない」とは言えないのではないか。つまり、補綴物が保険給付から外れるとしたら、歯科医師の診断・処置・装着のすべてが給付外となってしまうおそれがある。

またもう一つの問題は、大臣告示の委託歯科技工料金(概ね7対3)を遵守している歯 科技工士は21%に過ぎず、72%が「過当競争は避けられない」や「発注元の保険歯科 医療機関の理解が得られない」や「医療保険制度の体系に委託対価は組み込まれていない 」などの理由で遵守していないという現実だ。(日技実態調査)
大臣告示の遵守がなされないかぎり、「歯・技分離論」の柱は崩れ、適正な技工料の確 保は期待できない。点数の明示化など意味を持たなくなる。大臣告示に法的拘束力がない という行政の立場は恣意的であり、あくまでも不条理なひとつの疑義解釈であるにもかかわらず、最初から立法的性質を放棄した組織の責任は重い。

秋の原爆ドーム

内藤達郎撮影

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