補綴構造設計士・歯科技工士川島 哲の世界
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たっちゃんの関係法規
  その42 「混合診療判決について」 

内藤 達郎
(PSD)日本補綴構造設計士協会 相談役(法律)

がん患者の男性が国を相手取り、「混合診療」を原則禁止しているのは不当だと訴えていた裁判で、最高裁第3小法廷は男性の主張を退けた。混合診療を受けた患者は、保険外の医療だけでなく、制度上、保険医療分までが全額自己負担になってしまう。このため、提訴した男性は、保険外の新しいがん治療法を断念したという。

 主な争点は二つあった。まず混合診療を禁じる法的根拠があるかどうか。そして、原則禁止としている政策自体の妥当性である。健康保険法には「混合診療を禁止する」との規定はなく、他の条文から厚労省がそう解釈しているに過ぎない。1審は「厚労省の解釈は誤り」として男性の主張を認め、2審は「解釈は妥当だ」と逆転判決を出した。

 混合診療の禁止とは、保険給付の対象となる診療と対象外の診療を同時に実施することを禁止すること。一部保険適用外の治療を受けた場合は、通常保険給付の対象となる部分についても全額患者の自己負担となってしまう。混合診療を禁止する明文規定は存在しないが、現在の公的医療保険は現物給付を原則としているため、診療報酬点数表に規定されていない診療行為が行われた際には給付対象外になるとされており、健康保険法の運用により、実質的に禁止されている。

 混合診療への改革案とは、公的医療保険と私的医療保険の役割分担を明確にし、公的保険でカバーできない部分は、混合診療を従来よりも柔軟に認め、人々はその費用を私的保険で賄うといつた、混合保険の導入を念頭に置く新しい医療保険への改革である。

 医療サービスのすべてを公的保険で対応するか、あるいは私的保険で対応することも、理論的には考えられる。しかし、すべてを公的保険で賄うことは財政的に困難であり、また公的保険を解消することも政治的に実現不可能であろう。

 このとき問題になるのは、公的保険の守備範囲をいかに決定するかである。国民すべてに生存権を保障した福祉国家としての医療保障は維持されたうえで、財政状態などを勘案して大方の国民が賢明に判断して実現する医療への資源配分と、その範囲での医療サービスの提供が公的医療保険に求められる。

 これを一つの方向性として制度改革を進めていくことで、公的保険診療は従来どおり自己負担割合だけ支払い、それに加えて実費の上乗せ料金を支払う”差額徴収方式”の混合診療が、多数の患者の緊急な要望を満たすとともに、彼らの選択権を拡充し、公平性を損なうことなく経済厚生を増大させる可能性がでてくる。さらに、そのような消費者主権のもとで、多様なニーズを吸収すべく自由診療をめぐって医療関連の諸産業が拡大し、雇用や所得の増加をもたらすことになると考える。

広島平和公園

内藤達郎撮影

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