補綴構造設計士・歯科技工士川島 哲の世界
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哲学なくして、偉業なし。歯科界のリーダーにその診療哲学を開く

〜 Dentistry is work of love 〜
      リスクを負え

本多歯科医院 院長、S.J.C.D.インターナショナル副会長、大阪S.J.C.D.最高顧問 本多正明 氏

 ー診療における先生の哲学、あるいは信条を教えて下さい。
 歯科医師としての経験を重ねるにつれ誰しも、得意な治療法というものが出来てきます。意識的にせよ無意識ににせよ、自分にとってリスクの少ない治療を選択したくなるものだと思います。しかし、こうした癖がついてしまうと、本当に患者にとって必要な治療法を提供できない場面に遭遇する恐れがあります。時にはわれわれが、リスクを負って治療を行うことも必要です。
 自分には手に負えないと判断して別の専門医に紹介するような場合も、手が離れたから自分の責任の範囲外であるとは考えず、その患者に対して責任を持ち続けることが肝要です。
 恩師のRaymond kim先生は、よく「Dentistry is a work of love」とおっしゃっていました。医療者であるわれわれには、包括的な責任感、大きな意味での愛情や思いやりがなければならないと思います。

 ー人生で、転機となった出来事はなんでしょう。
 やはり、最大の出来事は師や仲間との出会いです。師としては、Kim先生、そして、日本歯学センターの設立者である田北敏行先生と寺川國秀先生です。田北先生と寺川先生からは「自分で考えて自由にやりなさい」と指導されました。これは、20代後半で血気盛んだった私たちにとって温かくも厳しい指導で、必死に勉強しました。
 また、そこで一緒に論議し学び続けた内藤正裕先生山崎長郎先生は、私にとって最高の親友であり、また師でもある。かけがえのない存在です。気持ちが前に向かないときにも、2人の活躍を見ては大きな励みとしてきました。

 ー現在、ご自身の課題とし、積極的に努めていることはありますか。
 まず、私の専門的分野である咬合と構造力学を、臨床に反映させて患者の長期的な健康維持に役立てることです。
 また、周りの人たちから、いろいろと学ぶよう努めています。これまでにもさまざまなことを学んできましたが、今なお、患者から教えられることも非常に多いです。時には成書から学んできたことと全く違う反応をすることもあります。そして、自分の診断・技術を過信しないことを心掛けています。
 同様にスタディ・グループでも、私は教える立場であると同時に、若い人たちから教えられる環境にあると考えています。私1人の力には当然、限界があります。歯科医療に対して常に謙虚であることが、向上し続けることに繋がると思います。

 ー先生ご自身も、若いころには「過信」された経験がありますか。
 あります!(笑)日本歯学センターへ入所したてのころは知らないことばかりで、とにかく、周りの人に追い付こう、周りの人よりも上手になりたいと、内藤先生や山崎先生とともに夢中で勉強したものです。気付くと非常に多くの知識と技術が身に付いており、恵まれた環境で学べているという自覚がありました。ところが、あるとき「本多先生の講演は聴く側のことを考えていない」と指摘され、”これでもか”と誇示する不遜な内容になっていることに気付き、深く反省しましたね。
 今は、「知っていること」よりも、「知らないことを学ぶこと」に、改めて楽しさや満足感を得ています。

 ー日本の歯科界の現状について、どのようにお考えでしょうか。
 現在は、各専門分野で、マテリアルや器械、技術が日進月歩で進んでいます。しかし、新しいものにばかり目を奪われ、基本が疎かにされてしまうことが往々にしてあります。 講演でもいつも言っているのですが、「Back to the basic」 「Challenge for the future」を心にとどめて欲しいと思います。基本を大切にしたうえで、慎重な姿勢で新しい手法を取り入れていくことが肝要です。

 ー後進へのメッセージをお送りください。
 患者への愛情と思いやりを持ち、リスクを負える歯科医師になってください。もちろん「リスク」とは技術や自信が無いのに治療に挑む「無鉄砲さ」とは完全に異なるものです。臨床を続けいくうえで、判断の困難な症例に出会うこともあります。日々研鑚して精緻な知識と技術を身に付けたうえで、患者のためにリスクを負える、それが歯科医療の路を選んだわれわれの責務だと思います。

DENTAL TRIBUNE 2008年9月Vol.4 No.9 掲載
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