補綴構造設計士・歯科技工士川島 哲の世界
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職人の手仕事

生活情報部次長 高橋 直彦

「祖父の財産はいつか無くなるが、手仕事は一生の財産」。東京で公開されている記録映画「ハート&クラフト」に登場するバッグ職人がそう話す。自信に満ちた表情が印象的だ。
 映画は、1837年に創業したフランスの高級ブランド「エルメス」の工房を巡り、フランス語で「職人」を意味する「アルチザン」たちの緻密な手作業を追いながら、その思いを丹念に拾っていく。
 この作品だけでなく、ファッション取材をしていて「アルチザン」という言葉を見聞きする機会が最近増えた。商品の製作現場を公開したり、ファッションショーで職人を登場させたら。欧米高級ブランドの多くが「アルチザンの手仕事」を盛んにアピールしている。
 目新しさだけでなく、ブランドのモノ作りの質の高さを職人によって強調する意図もあるのだろう。実際、こうした手仕事に力を入れるブランドの高額商品が、日本でもよく売れている。
 日本百貨店協会によると、百貨店の高級品(美術、宝飾、貴金属)の売上高が昨年6月に52か月ぶりに前年同月を上回った。それ以来、堅調な状態が続いている。
 あるファッション誌の編集長に言わせると、「富裕層だけでなく、一般の人も100万円以上する腕時計をポンと買っています」。東日本大震災以降、目立つ消費行動で、長く愛用できる商品には出費を惜しまない。
 高級服飾品だけとは限らない。日々の食品から生活用品まで人手の加わっている商品がよく売れるという。未曾有の天変地異で揺らいだ心の隙間を職人の手仕事が埋めている。

2012年6月7日 讀賣新聞 掲載
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