補綴構造設計士・歯科技工士川島 哲の世界
PSD (PSD)伝達事項 川島セミナー会場 著書紹介 セミナー 執筆記事 気になるニュース トピック ホーム

戦争悲劇に焦点  独軍事博物館

三好 範英(写真含む)

ドイツ東部ドレスデンにある独連邦軍の軍事歴史博物館が昨年新装され、異色の展示が話題を呼んでいる。世界各地の同種の博物館とは趣を異にし、戦争の悲惨さや社会的な背景まで掘り下げた、ドイツならではの構想に貫かれているからだ。

「愛国心高揚」展示なし

       

入り口近くに掲げられているのは、「サクリファイス」(犠牲)と名付けられた写真のコラージュ。イラク戦争で負傷した米軍兵士らの手術の様子を撮影した60枚の写真が壁面に並ぶ。戦争の悲惨さをストレートに表現する展示品だ。
 1万点を超える展示品の中には、2004年のアフガニスタンの平和維持活動中に爆弾攻撃に遭い、大破したジープ型車両もある。傷痍軍人が使った義手、義足も展示されている。
 建物は、19世紀後半からある広大な兵舎の一角にあり、19世紀終わりに軍事博物館として開館した。ドイツ統一後、旧東独の軍事博物館を全面的に見直す構想が持ち上がり、昨年10月に新装開館した。
 博物館長のマティアス・ロッグ大佐は、「構想段階から、兵器や軍服中心の展示ではなく、多面的に戦争の現実に迫るという方針があった」と語る。兵士や武器のおもちゃ、軍楽や慰問活動に焦点を当てた「軍隊と音楽」のコーナーも多様な歴史を伝える。
 軍事博物館には、愛国心の高揚などを目的としたものが少なくないが、この博物館の展示にはその傾向はみられない。戦争に伴う「暴力と苦悩」に力点が置かれている。

 ロッグ氏は「2度の大戦、ナチス政権といった独現代史の負の遺産抜きには考えられない」と語る。異例の軍事博物館だけに「他国の軍人の見学者からは『ドイツだから可能だ』と指摘される。右派からは『あまり弱腰、軟弱だ』などと批判され、武器や技術の展示を期待する来訪者の多くは、驚き失望する」という。
 広報担当のマルティン・ナーゲル中尉も「連邦軍の兵士を案内すると、兵士の間で評価が分かれ議論になる」と語る。見学者数は、この1年間で45万人。ナーゲル氏は「年間見学者が50万人を超えるドイツの博物館は、全体のわずか4%。国内外の関心高い」と説明する。
 ドレスデン市内から来た自営業のファルク・ハルトマンさん(35)は、「戦争の多様な側面を展示していて興味深い」と話していた。

2012年11月27日 讀賣新聞 掲載
Copyright UNIDENT Co.,Ltd. All rightss reserved